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2006年 02月 10日
手紙
久しぶりにエンパイア・ステート・ビルの展望台に来た。
ひとりで。
あの人のお気に入りで、何度も一緒に来た場所だった。

今頃どこにいるのだろう。
もうこの町を離れてしまったのだろうか。

マンハッタンを一望できるこの場所で
バレンタイン・デーに花束をくれた。
真っ赤な薔薇の花ばかりを両手にいっぱいに。

大人になってから出会ったのに
まるで幼馴染みのように気持ちが通じる気がして
そして私はまだ随分と子供じみていて
私を驚かせたり喜ばせたりすることが好きだったあの人の好意に
ただただ、はしゃいでいた。

どうしてすれ違ってしまったのか
わからない。
どんなに考えても
そして今でもわからない。

それでもあの12月
ロックフェラーのクリスマス・ツリーの下で
もう一度会おうと言ってくれたのはあの人だった。

あの日
約束通りに行かなかったこと
ごめんなさい

何度も
何度も
ロックフェラーの人混みの向こうに
あの人の姿を探しながら
私は結局ツリーのそばに行けなかった。

怖かった。

真冬の空気が
透明に澄んだ硬質な真冬の空気が
硝子箱のように自分の心の中の全てを
無防備なまま
あの人の前に露わにしてしまいそうで。

あの日唐突に
はじめて自分が向き合った想いは
約束の場所に立てば
心から溢れたまま
とめどなく流れ出してしまいそうで
それは自分がそれまで
思いもしなかったもののようで。

自分の幼さに私はただ絶句し
立ち尽くし震えるばかりだった。



この展望台から見る夜景のビルは
まるで町中に人々がたてた
クリスマス・ツリーのようだとあの人は言った。

今ではこのビルより高い建物のないこの町で
空に向かってそびえるツリーたちを
上から見下ろしているのは
サンタクロースと僕たちだけだよと。



重く大都会を覆う灰色の夕空は
夜に渡されると優しく町の灯りを映す。




ねえ

いつの間にか

雪が降り始めてる




大粒の2月の雪も
次第に増える町の灯を映して
どれが本当の光かわからないほど
町中を照らし始めた。

風が吹いて町を流れる光は
まるで
ビルの間を駆け抜けるソリみたいに見えた。

空を仰いで頬に受けた雪が
とてもあたたかいのは
なぜなんだろう。



今夜手紙を書こう。
宛先もわからなくなってしまったけれど
届かない手紙を書こう。

いつか二人で話していたあの北の国のクリスマスツリー
町中の大人がサンタクロースになって、
世界中を飛び回るというあの北の小さな町。
そして不在の大人たちの代わりに、
かつてプレゼントを受け取った子供たちが大人になって世界中から集まり、
町の人々のために広場の大きなツリーの灯りを燈すというあの伝説の町。
今年は私も出かけてみようと思っていること。
クリスマスではないかも知れない。
でも、ひとつ小さな灯りを燈したいこと。



受け取った贈り物ははかりしれない。
誰かを想う気持ちは
ただ
ただあたたかい。

幸せでいてくれればそれでいい。




雪の季節が終わるまで
私はこの思い出に寄り添っていこう。
そして春の風が吹いたら
両腕を広げて
全てを風にまかせよう。



あの人に届く風に
私の色が何もなくなっても
その風があの人を
あたたかく穏やかに優しく包んでくれることを
ただそれだけを祈りながら。



▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼【恋愛物語 Ⅱ】▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼

      バレンタインに先駆けて手作りチョコを作る前に
      心の物語を書いてみませんか?

      ルールは『創作であること』
            『恋愛ものであること』だけです。
      書きたいことを書きたいように書いてください。

      期限は2月14日まで (テケトー)

      トラバ先:http://zoobee.exblog.jp/4028709/

      ※どなたでも参加いただけるようにこのテンプレ
       を文末にコピペしてください。

       企画元:移動動物園 http://zoobee.exblog.jp/
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by raphie_y | 2006-02-10 07:55 | Christmas 2004


    


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